薬品と恋心
王都へ
馬に乗った屈強な護衛たちが馬車の周りを固めるようにして王都への道を進んでいく。
その中にレティシアの護衛役であるはずのジーニアスの姿はない。
ティアは流れる景色を眺めながらここにいない人物に想いを馳せる。
「ジーニアスのことでも考えているのかしら?」
声をかけられてティアはゆっくりとそちらへ視線を向けた。
そこにはシンプルな赤いドレスに身を包んだレティシアが美しい笑みをたたえていた。
「そうですね…無理を言ってしまいましたし」
「ふふ、心配しなくても必ずジーニアスは薬を完成させて追いついてくるわよ」
「そうですね」
ティアは軽くほほ笑むと再び窓の外に目を向けた。