薬品と恋心

ジーニアスがなぜあんな顔をしたのかティアには理解できなかった。


「行ってほしくない」とでも言いたげな表情がティアの頭から離れない。


でも、だからといってジークに会えるかもしれないチャンスを逃したくはなかった。


結果的にジーニアスに無理をさせることになってしまい、ジーニアスは調合室にこもりきりになってしまった。


そして、王都に向けて出立する日になってもまだ出てくる気配はなかった。


調合室を訪ねると、



「舞踏会までには必ず間に合わせる。後から行くから先に行ってて」



という返事が返ってきたため、ティアはレティシアと共に一足先に王都に向かって出発したのだった。


それから幾日かたち、ティアは久しぶりの王都に降り立った。


そして舞踏会が開催される日までレティシアの屋敷でジーニアスがつくのを待つこととなった。


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