薬品と恋心

舞踏会の前日の夜はあいにくの雨模様だった。


窓を打ち付ける雨音の中に馬の蹄の音を探すが、それはいまだ耳に届かない。



(ジーニアス…)



ティアは窓越しに外を見やる。


しかし、そこに広がるのは闇ばかりで光を見つけ出すことはできなかった。


ジーニアスは舞踏会までには王都に来ると言っていた。


それなのにどうして来ないのか。



ーまさか…!



ざわりとティアの心に暗い影が広がっていく。



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