薬品と恋心

コンコンと扉を軽くノックすると、ほどなくして「どうぞ」という控えめな声が聞こえてきた。


それを確認したあとジーニアスは扉を開けた。



「ジーニアス」



ジーニアスを見て、ティアは少し緊張しつつも嬉しそうな笑みを浮かべる。


いまこちらに向けられているその笑顔は誰のものになるのだろう。


自分のものにならない笑顔にジーニアスの胸は締め付けられた。


小ビンを持つ手にわずかに力が入る。



ーこれを渡してしまったら、ティアとのつながりはなくなる。



しかし、渡さないわけにはいかない。



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