薬品と恋心
(どうすればいいの…?)
下を向いて考えこんでしまったティアの耳にジーニアスの声が聞こえてくる。
「完全に解除はできないけど、オレが一時的にティアをもとに戻すことはできる」
すぐさま顔を上げると、ジーニアスの寂しそうな表情が目に入った。
「君の気持ちがオレにあればよかったんだけど」
「…え…」
傷ついたように悲しげに響くその声にティアの胸がギュッと苦しくなった。
「ティアは舞踏会で会いたい人がいるんだろう?」
「…はい」
ージークに会いたい。会って話がしたい。
その気持ちは変わってはいない。だけど、なぜか今胸が痛い。
「だから一時的に解除して舞踏会に行けるようにしてあげる」
「…ありがとうございます」
元に戻れる。それはうれしいはずなのに。
どうしてこんなにも寂しい気持ちになるのだろう。
どうしてそう思うのかわからずティアは戸惑った。