薬品と恋心

ー手の甲への口づけ。



男の人に接する機会など仕事以外では一切ない。ましてや手の甲に口づけされたことなどない。



(貴族の間では挨拶のようなものかもしれないけど…っ!)



ジーニアスに手の甲にキスをされる。ただそれだけのことなのに顔に熱が集まってくる。



「ティア?」



「…っ、わかりました!!」


間違いなく自分の顔が赤くなっていることがわかったティアはジーニアスから顔を隠すようにしてベットに向かうと、シーツをはぎ取り無造作に体に巻き付けた。



ー恥ずかしさはあるが、それで元に戻れるなら。


ティアは小ビンのふたを開けると一気に中身をあおった。


やや苦味のある液体が喉を通過していく。


小ビンの中身をすべて飲み終えるとティアは手を差し出した。



「…お願いします」



「じゃ、いくよ」



ジーニアスはティアの前に膝まづくと、そっと手の甲にキスをした。



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