薬品と恋心
「ごきげんよう、レティシア様」
声が聞こえてきてふと顔を上げると、一組の貴族がレティシアに話しかけていた。
「ごきげんよう。お会いするのは久しぶりね。お元気そうでなによりです」
レティシアは顔が広いらしく、そこにいるだけで人が寄ってくる。
レティシアはティアを友人として紹介してくれた。
「はじめまして。ティアといいます」
柔らかい笑みを浮かべながらドレスを軽くつまんでお辞儀をする。
ゆっくりと顔を上げると、笑顔をたたえた瞳と目があった。
「よろしく、ティアさん」
「よろしくお願いいたしますわね」
返事が返ってきてホッとティアは胸をなでおろした。
幼い頃に教えこまれたものはきちんとものになっていたらしい。
安心したのも束の間、レティシアとジーニアスは挨拶まわりに歩き回り、その後ろをついて歩くティアの心は落ち着く暇がなかった。