薬品と恋心
「…そうだ、約束のしるしにこれをあげるよ」
ジークは着けていた赤いスカーフをはずし、ティアに差し出した。
「必ず会おう。それまで持っていて」
受け取ったスカーフには角のほうに小さく紋章とイニシャルが刺繍されていた。
「じゃあ、私もこれをあげる」
ティアは髪を結んでいたリボンをほどいて差し出した。
淡い藤色のシンプルなリボン。中心に紫の糸で一本ステッチが施されているのが特徴のお気に入りだ。
ジークは寂しさを吹き飛ばすように、ニッ笑ってそれを受け取った。
「よし!じゃあ会えたら交換しような!!」
「うん!」
「ああそれと、これ帰りにでも飲んで」
ジークが取り出したのはいつものジュース。持ち帰ることを考えてくれたのか、手のひらサイズのかわいらしい小瓶に入っている。
それを見たとたん、ティアの顔がほころぶ。
「わあ、ありがとう!」
「喜んでもらえてよかったよ。じゃあまたな!」
「うん、また会おうね!!」
幼き日の約束。
またすぐに会えると信じて疑わなかったのにー。