薬品と恋心

ジーニアスは人目を避けるようにしながら廊下を突き進む。


しばらく歩いて舞踏会会場からの音楽がわずかに聞こえる場所までくると、人気はまったく感じられなくなった。


ジーニアスはある部屋の前で足を止めた。



「…っ、ティア大丈夫か!!」



バンッと扉をいきおいよく開けて部屋に入ると、ジーニアスはしがみついているティアに目を向けた。


ティアの体は少し小さくなっていて、ドレスから肩がわずかに露出していた。



「…っは、ジー…ニアス…っ…」



うまく呼吸ができず、苦しいのか長い睫毛が涙に濡れていた。


でもジーニアスにはどうすることもできない。


できるのはすがりついてくるティアを抱き締めてやることぐらいだ。



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