薬品と恋心
ジーニアスは部屋にあるベッドに腰かけると、安心させるようにティアの頭を優しく撫でた。
「どこにも行かないから。ここにいるから」
それが耳に届いたのか、一瞬ティアの力が緩んだ。
「ー!!」
ほっとしたのもつかの間、ぐっと強い力が体にかかった。
戻る際に感じるひときわ強い痛みが来たのか、ジーニアスの体に回されていたティアの手に力が込められたのだ。
「は…っ、あ…っ、あああああっ!!」
ひときわ高い苦しげな声を上げたかと思うと、ジーニアスが手に口づけを落としたときとは逆に一気にティアの体は小さくなり、ティアはドレスに埋もれた。
「…ティア」
「…ん…」
まぶたに軽く口づけを落とすと、ティアはぼんやりとした顔でジーニアスを見上げた。
頭が働かないのか何をされたのかわかっていないらしい。
あまりにも無防備すぎる姿のティアをひとり残すのは不安が残るが、しなければならないことがある。
「少し待っていてくれ。すぐ戻るから」
ジーニアスはティアをベッドに寝かせると部屋を出ていった。