薬品と恋心
「知ったところでどうにもできないだろう?それに、そうやすやすと首謀者が見つかるようにしていると思うのか?」
ーそうは思わない。
貴族を襲わせる、という大胆不敵なことをしているのだ。
そう簡単にシッポをつかませるとは思えない。
ティアは下唇をかみしめた。
「ジェンティアナ。すべてはお前を手に入れるためにしたことなんだ」
ゲオルグは穏やかなトーンでティアに語りかけながらその肩に手を置いた。
ー何を勝手なことを。
ザワリと怒りに震えたティアはパシン、と勢いよくその手を払い除ける。
手をはじかれ、ゲオルグは驚いた表情でティアを見ていたが、すぐに不敵な顔つきになる。
「反抗したいならすればいい。だが、お前の好いた男が不慮の事故に遭わなければいいがなぁ」
「ー…っ!!」
ジーニアスを巻き込むわけにはいかない。
(だって、彼には…)
ー婚約者がいる。
ジーニアスの幸せを奪うわけにはいかない。