薬品と恋心
レティシアはそんなティアをしばらく眺めてから、仕方なさそうにため息をついた。
「…わかったわ。貴女ともう少し一緒にいたかったけど、仕事なら仕方ないわよね」
少し寂しそうな顔を向けられ、ティアの胸がちくりと痛む。
「次回お茶できるのは戻って来たときになるのね」
ティアはそれに答えずあいまいな笑みを返した。
ー約束をしてもそれはきっとかなわない。
ティアは静かに紅茶に口をつけた。
優しい香りとほどよい温かさに心が少しやわらいだ。
「その話をするためにお茶に来てくれたのね。まぁいいわ。せっかくなんですもの、お菓子くらいいただいてちょうだい」
勧められてティアはテーブルの上に目を向ける。
そこには美味しそうなお菓子が置いてあった。
いつもなら喜んで食べているところだったが、これからしなければならないことを考えると喉を通る気がしなかった。
「まだしなければいけないことがありますので…申し訳ありませんがこれで失礼いたします」
ティアは紅茶だけ飲むと席を立ち、庭園を後にした。