薬品と恋心
それにティアが行こうとしている道は危険がないとは言い難い。
帰ってこなかったとしても盗賊に襲われたのか、拐われたのかわからない上、探したところで足取りは掴めない。
そうなれば探すことはしないだろう。
ーでも、それでいい。
そう思うのに心は考えと相反して酷く胸を締め付ける。
(ジーニアスの部屋に着かなければいい…。それがもっと遠くにあったなら…)
そんな考えをしたところで距離が変わるはずもない。
ティアはジーニアスの部屋の前で立ち止まり、そのドアを見つめる。
ーもう二度とティアとして会うことはない。
ティアは瞳を伏せ、深呼吸をしてからそのドアを軽く叩いた。