薬品と恋心
元いた町へ
レティシアとジーニアスに別れを告げた数日後。
ティアは荷物と共に幌馬車に揺られ、元いた町に向かっていた。
天気に恵まれ、出立するにはとてもよい日であったというのに、ティアの心は曇り空だった。
(なぜ…こんなことに…)
ティアは被ったフードの下で頭を抱えていた。
その原因はティアの隣に座っている人物にある。
ティアは隣をフードの下からちらりと見上げた。
「ん?何、ティア」
降ってきた声の主はジーニアスだ。
「なんでもないです」
ティアはにっこりと笑ってみせた。
なぜここにジーニアスがいるのか。
それはあの日のジーニアスの発言にあった。