薬品と恋心

それからしばらくして、さらに追い討ちをかけるような出来事がティアを襲った。


その日、叔父は酒を片手に珍しく上機嫌だった。


何かの前祝いのようで、普段なら飲まないような少し高めのワインを開けている。



「おまえに良い話を持ってきてやったんだ」



「良い話…ですか」



「なんだ、今日はいつも以上に辛気くさい顔をしているな」



せっかくいい気分になっていたのに、興ざめだというように叔父は眉根をよせた。



「まあ、いい。おまえに縁談を持ってきてやったんだ」



「縁談…私、結婚するんですか」



ーお金なんてないのに。


伯爵である父はおらず、家はどうなったのかわからない。


この叔父は事業がうまくいっておらず、お金があるどころか借金を抱えている。


< 31 / 421 >

この作品をシェア

pagetop