薬品と恋心
ーそして今に至る。
どうあってもジーニアスとは町に着いたら離れなければならない。町までついてこられても、それは変わらない。
どうやってジーニアスと離れるか。それは、ついてくることになったと分かった時点ですぐに手を打った。
ー今さら悩む必要はない。
ティアは外の景色を眺めているジーニアスを見つめた。
端正な顔に赤銅色の髪。その瞳に映るのは自分ではないとしても。
その姿を忘れないように瞳に焼き付けておきたい。
ジーニアスと別れるのは町に着く日の夕方。
町の鐘が鳴った時がリミットだ。
残された時間は少ない。
(だったら…最高に楽しい思い出を作ろう)
それがあれば、きっとこの先どんなことがあっても乗り越えていける。
ーもう、悩まない。
ティアは顔を上げて空を見た。
そこには清々しいほどの綺麗な青が広がっていた。