薬品と恋心
少しばかりの保存食に服、財布。
短剣に薬、薬草。
そして赤いスカーフ。
たいしたものはないが、ゲオルグの元に行ったらこんなものでもすべて取り上げられてしまうに違いない。
ティアは赤いスカーフを手に取った。
ジークから預かった幼き日の約束の証。
これだけは取られるわけにはいかない。
(気付かれなければ、取られることはない…よね)
ティアはスカーフを襟もとに結び、紋章が見えないように整える。
ー準備は整った。
(よし…行こう)
ティアは鏡に映る自分を真っ直ぐに見つめたあと、財布を入れた小さなカバンを手にジーニアスが待つ広間に向かった。