薬品と恋心
持っているものなんて何もない子供を結婚相手に選ぶなんて変な人もいたものだ。
「そうだ。金持ちの商人のところだ。おまえが伯爵家の令嬢だと伝えたら喜んでいたぞ」
ー伯爵令嬢。
最後に残されていた肩書きだけで選んだというのか。
伯爵令嬢を妻にすれば貴族とのつながりができると思っているのだろうか。
ティアは叔父に引き取られてからは貴族の華やかな場に出ることはなかった。
だからつながりなんてあるはずもないのだが、金にうるさい叔父がマイナスになることなど伝えているわけがない。
「結婚となれば、持参金が必要なのではないですか?」
「それは必要ない」
ワインを片手に、にやりと叔父がいやらしく笑う。
嫌な予感がして、心がざわついた。