薬品と恋心
ティアは近くにあった店を楽しそうに覗いている。
そこにはフードを目深にかぶり、辺りを常に警戒していたティアはどこにもいなかった。
手に品を取り、選んでいる姿は普通の女の子と変わらない。
ティアはしばらく品を手に眺めていたものの、それを元の場所に戻すと隣に立つジーニアスを見上げた。
「行きましょうか」
「買わないのか?」
「いいんです。仕事で来てますし、荷物になりますから。それに、ここに来れただけで十分です」
ニコッと笑顔を見せる反面、ティアの瞳はなぜだか寂しげだった。