薬品と恋心
ティアはジーニアスに限らず、どんなことがあっても誰にも頼らない。
そうしないと生きていけなかったのだろう。
今、手を伸ばせばティアの手を掴むことも肩を抱き寄せることもできる。
こんなに近くにいるのに、ティアとの心の距離は遠い。
ジーニアスは伸ばしかけた手を握りしめた。
ーティアに頼られる存在でありたいと思う。
ー何でも話し合える、信頼される存在に。
ーだけど。
さらに視線を落とせばティアの襟もとを飾る赤いスカーフが目に入る。
ふわりと揺れるスカーフの持ち主のことをティアはどう思っているのだろう。
間違いとはいえ薬を飲ませて成長を止め、両親を失わせる原因を作った男のことを。