薬品と恋心
町の景色が一望できる小高い丘の上までやってくるとティアはようやく足を止めた。
そこには誰もおらず、周りに立つ木々たちが風を受けてさわさわとゆらめいているだけだった。
「いい場所でしょう?」
ティアはくるりと振り返り、その瞳にジーニアスを映した。
「それで、話って何ですか?」
「いや…その、スカーフ…大切にしてるんだな」
そのきれいな瞳に見つめられることに耐えられず、ジーニアスは目線をわずかにずらす。
「え?ああ…これですか。これは小さな頃に預かったものなんです」
ティアはとても大事そうにスカーフに触れた。
「再会したらお返しする約束をしたんです…でも…」
ティアのスカーフを見る瞳に陰りが見えたように思えたとき、サアッと風が通り抜け、ティアの髪をさらい、その瞳が一瞬ジーニアスの視界から消えた。