薬品と恋心
屋敷を維持するため、ティアが叔父にしてきたことすべては意味のないものだったのだ。
別に気に入られたいと思ったわけではない。
それでも、家族としてのつながりがあると思っていたのに。
叔父はお金のためにそれをあっさりと手放したのだ。
聞いたことを信じたくなくて、働くことを停止しようとする頭をなんとか働かせて今の状況を理解しようと努力する。
成長は止まり、伯爵令嬢という肩書きのせいで見ず知らずの商人と結婚させられそうになっており、ジークとの約束も守れそうにない。
「…ジーク…」
震える唇から小さくこぼれ落ちた名は空気に溶けて消えていった。