薬品と恋心

逃亡


ティアの結婚の日が近づくにつれ、部屋の中に着々と物が増えていった。


古びた部屋に似つかわしくない華やかなドレスに靴、見るからに高級なアクセサリー。


屋敷には新しい調度品が運び込まれ、古い屋敷がなおいっそう古びてみえた。


購入費はティアを売ったお金なのか、それとも叔父がとっておいたお金なのか。


ーそれはわからない。


二階にある自室の窓から忙しなく動く人たちの様子を眺め、ティアはサイドテーブルに置いてあるカレンダーに指をすべらせる。



「…あと少し」



カレンダーに書かれた日付と自室の窓から見える景色が伯爵令嬢結婚の日が近いことを知らせている。



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