薬品と恋心
椅子に座って本を開いたとき、コンコンと扉をノックする音が響いた。
ー来た。
「…どうぞ」
できるだけ落ち着いた声で答えると、ガチャリと扉が開き、上機嫌の叔父が顔を出した。
「ティア。どうだ、調子は」
最近叔父はティアを高級な商品としてかわいがるようになった。
こうして様子を見に来ることも珍しくはない。
あれだけ手をあげ、怒鳴りつけ、疎ましく思っていたのに、お金になるとわかったとたん手のひらをかえしたように構いはじめた。
しかし、今のティアにとってそれはもう遠慮したいものとなっていた。
でも、無視するわけにもいかない。
ティアは本から目を上げ、閉じてサイドテーブルに置いた。