薬品と恋心

決意を胸に


確認と称してティアに触れた日から、毎日のように来ていたゲオルグはぱったりと姿を現さなくなった。


ティアは相変わらず部屋から出ることは許されておらず、窓から見える変わらない景色を眺めることしかすることがない。


しばらくゲオルグに会わずにすんだことにより、ティアは心が落ち着き、冷静な判断力を取り戻した。


ふいにコンコン、と部屋の扉を叩く音が聞こえてティアはそちらを向いた。


はい、と返事をするとカチャと鍵が開けられ、扉が開かれる。


開けられた先にいたのは花束を抱えたメイドだった。



「ゲオルグ様からでございます」



「…そうですか」



ゲオルグが来なくなってからは時折花が届けられたりはしているが、ティアの表情は晴れない。


これがジーニアスからであったなら心から喜べるのだろうが、あんなことをしたゲオルグからのものだと思うと、いくら綺麗でも喜ぶことなどできなかった。



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