薬品と恋心
花嫁奪還
明日なんて来なければいい。
幼いころ、嫌なことが待ち受ける日にはよくそう思ったものだった。
でも、どんなにそう願っても次の日はやって来る。
ティアは真新しい白いドレスに身を包み、大きな扉の前に立っていた。
ーこれを開ければ、私は…。
ティアはキュッと唇を引き結び、瞳を伏せた。
ーゲオルグのものとなる。
扉が開かれた音が耳に入り、ティアは伏せた瞳をゆっくりと持ち上げ、長い絨毯の先で自分を待っているゲオルグを視界に入れた。
ティアは一歩ずつ、ゆっくりとした足取りでゲオルグに近づいて行く。
ティアが歩くたび、ドレスがふわりと空気を含んで美しく揺れた。