薬品と恋心
叔父はティアに近づくと手をとり、目線の高さまで持ち上げてなめるように見たあと、満足げに笑った。
「よしよし、手荒れはなくなったな」
「…おかげさまで」
「あとはその辛気くさい顔だな。嘘でも笑ってみせろ」
ぐっと強い力で顎をつかまれ、ティアの顔が痛みにゆがむ。
「結婚相手の前でそんな顔してくれるなよ。笑顔でむかえて必ず気に入られろ。そうでなかったら、ただじゃおかんぞ」
先ほどまでの笑みはどこかに消え、憎々しげにこちらを睨み付ける叔父の顔が眼前にせまる。
「…はい」
「よし、いい子だ。結婚のときまでそうしておとなしくしておくんだな」
睨み付ける目はそのままに、叔父は口の端を上げて笑った。
まるで獲物は逃がさないといった瞳に体がすくむ。
叔父は喉の奥でクッと笑うとティアから手を離し、踵を返して部屋から出ていった。