薬品と恋心
声の主は赤銅色の髪を揺らしながら会場に足を踏み入れた。
「式の邪魔をするとは…誰かこの者をつまみ出せ!!」
ゲオルグはティアの肩を抱き寄せると、苛立ったように声を荒げた。
男爵家の使用人たちが取り囲むよりも早く彼が名乗りをあげる。
「式の最中失礼する。私の名はジーニアス・フォン・ヴァンデンベルグ・ディンレーベン」
ーえっ…!?
初めて知ったジーニアスの正式な名前。
その信じられない名前を耳にしてティアは瞳を見開いた。
それは式に参加している人たちも同じようで、一気に周りがざわめき立った。