薬品と恋心
「もう二度と離さない」
ティアの耳元に聞こえる狂おしげな声と力強く抱き締める腕。
「はい。私を…離さないで」
答えると同時にふさがれる唇。
ときに優しく、ときに激しく求められる口づけの熱に浮かされながらも懸命にそれに応えていく。
脳裏に浮かぶのはジーニアスと離れた日のこと。
本当は…離れたくなんかなかった。
しかし自分の事情に巻き込むわけにはいかないとーそう考えた上での判断。
頭では理解していたけどつらかった。
心が引き裂かれそうだった。
だけどジーニアスは来てくれた。
あの場所から連れ出してくれた。
だから。