薬品と恋心

一分、二分が経過しただろうか。いや、もしかしたら30秒も経っていないのかもしれない。


叔父はまだその場から動かない。


廊下に置いてある時計の音さえ、もはやティアの耳には聞こえない。


心臓の鼓動がやけに大きく、ドクン、ドクンと脈うつようにゆっくりと胸を叩くのを全身で感じる。



「…逃げだそうとして、この近くにいたりしてなぁ」



クククッと嫌な笑い声が聞こえたかと思うと、叔父の横顔が扉のむこうからわずかにのぞく。



「……っ!!」



ギョロリとした目がそこから見えて、ティアは息をつまらせた。


叔父は隅から隅まで舐めるような視線をあたり一帯に向け、誰もいないか確認しているようだ。


カチ、コチ、カチ、コチと時計が時を刻む音だけが暗い廊下に響く。



< 47 / 421 >

この作品をシェア

pagetop