薬品と恋心
一分、二分が経過しただろうか。いや、もしかしたら30秒も経っていないのかもしれない。
叔父はまだその場から動かない。
廊下に置いてある時計の音さえ、もはやティアの耳には聞こえない。
心臓の鼓動がやけに大きく、ドクン、ドクンと脈うつようにゆっくりと胸を叩くのを全身で感じる。
「…逃げだそうとして、この近くにいたりしてなぁ」
クククッと嫌な笑い声が聞こえたかと思うと、叔父の横顔が扉のむこうからわずかにのぞく。
「……っ!!」
ギョロリとした目がそこから見えて、ティアは息をつまらせた。
叔父は隅から隅まで舐めるような視線をあたり一帯に向け、誰もいないか確認しているようだ。
カチ、コチ、カチ、コチと時計が時を刻む音だけが暗い廊下に響く。