薬品と恋心

しばらく休んだあと、ティアは颯爽と目的地へ向かって歩をすすめた。



「なるほど…」


着いてみて報酬が高い理由と、ティアにしか頼めない理由がわかった。


薬草が生えているのは崖の真ん中にある洞窟。


そしてそこに続く足場は朽ちかけていて、もはや大人が歩いてはいけない状態になっていた。


でも体重の軽い子供ならなんとかいけそうだ。



「だから私しかできない仕事って言われたんですね…」



フフっと乾いた笑いがこぼれる。


眼下に広がる絶壁から時折強く吹く風がフードをはぎとり、ひとつにまとめた長い青銀髪の髪を大きくゆらす。


こんな仕事が舞い込むのはこれが初めてではない。


しかし慣れているとはいえ、気合いを入れて挑まねば危険だ。


ひとつ深呼吸をして心を落ち着かせる。



「では、行きましょうか」



誰に言うともなしにつぶやくとティアは足を踏み出した。



< 50 / 421 >

この作品をシェア

pagetop