薬品と恋心
しばらく休んだあと、ティアは颯爽と目的地へ向かって歩をすすめた。
「なるほど…」
着いてみて報酬が高い理由と、ティアにしか頼めない理由がわかった。
薬草が生えているのは崖の真ん中にある洞窟。
そしてそこに続く足場は朽ちかけていて、もはや大人が歩いてはいけない状態になっていた。
でも体重の軽い子供ならなんとかいけそうだ。
「だから私しかできない仕事って言われたんですね…」
フフっと乾いた笑いがこぼれる。
眼下に広がる絶壁から時折強く吹く風がフードをはぎとり、ひとつにまとめた長い青銀髪の髪を大きくゆらす。
こんな仕事が舞い込むのはこれが初めてではない。
しかし慣れているとはいえ、気合いを入れて挑まねば危険だ。
ひとつ深呼吸をして心を落ち着かせる。
「では、行きましょうか」
誰に言うともなしにつぶやくとティアは足を踏み出した。