薬品と恋心
★第二章★ 迷惑な紳士
採取作業を無事に終えて、ティアは町へ帰りついた。
フードを目深にかぶり、周りを警戒しつつ、足早に目的地を目指す。
珍しい薬草は高く売れるため、持っている者は狙われやすいからだ。
実際、帰り道に襲われ、採取した薬草を奪われたなどという話は耳にすることは多い。
町で、ましてや子供を狙う者はまずいないと思うが、警戒するに越したことはない。
しばらく歩くと目的地の看板が見えてきた。
植物の葉をかたどった木の看板を掲げている「薬草販売店プランツ」だ。
カラン、と音を鳴らすドアを開けて声をかける。
「こんにちは」
「おお、ティアか。悪いな、いま相手できないんだ」
店に入るなりカウンターにいた店主が気まずそうな顔を浮かべた。
相手ができないーそれはつまり、今取り引きはできないということ。
その理由はすぐにわかった。
カウンターに方肘をついて立っている紳士がいたからだ。
ティアは紳士を見たとたん、一瞬息をのんだ。