薬品と恋心
「…あの子供は?」
店を出ていく子供の後ろ姿を眺めながら、紳士…もとい青年は小声で店主に尋ねた。
「ああ…、近所の子さ。よく遊びにくるのさ」
ー遊びに?
店主の言葉に青年は違和感を覚えた。
この店は裏通りにあり、決して治安が良いとはいえない。
ましてやここは、薬よりも毒草や危険な薬剤の材料を取り扱う店だ。小さな子供が遊びにくるような所でもない。
親なら、子供をまずこんなところに連れてきたいとは思わないだろう。
店主も歯切れの悪い言い方をしているし、あの子供が自分の姿を見せないように隠しているのも気になった。
(何か訳ありっぽいな)
青年は子供の姿がドアの向こうに消えたあともしばらくそこを見つめていた。