薬品と恋心
高い棚に置いてある文献を取ろうと四苦八苦していると後ろから伸びた手が文献を抜き取った。
「この本が欲しいんだ?」
「え?」
見上げると人懐こい瞳と目があった。
つい最近薬草店で見た顔だ。
クセのある赤銅色の髪にあの日と同じ興味津々な瞳。なんとなくジークと面差しが似ている青年だ。
「なぜあなたがここにいるのですか?」
「ん?なんかフードかぶった小さな子が見えたから」
いかにも偶然に見つけた、という感じを装っているわりに肩で息をしている。
見るからに走ってきたことがわかる。
「それに、調べものがあったら来るのは普通じゃない?」
「まぁ…そうですね」
静かに答えながらティアは警戒の色をその瞳ににじませる。