薬品と恋心
「…なんてな。そんなわけないよな」
そう言って青年は寂しげに微笑んだ。
ティアはその瞳を見てはっとした。
(この人、私を見ていない)
その瞳はティアを映しているのに、どこか遠いものでも見ているようだった。
ーどうして、そんな顔するの。
見ているだけなのに、なぜだか切なくなる。
青年の意図が読めなくてティアは戸惑った。
それに気づいたのか、青年はすぐに取り繕った笑顔をティアに向けた。
「あ、ごめん。変なこと聞いたな。…で、この本がほしいんだよな?」
「あ…あっ、はい。取ってくれてありがとうございます」
差し出された文献を受け取ろうと手を伸ばす。
受け取ろうとした寸前、ひょいと青年は文献を頭の上へかかげた。