薬品と恋心
もちろん、ティアの手が届くはずもない。
突然の行動に驚き、ティアは顔を上げた。
「な…」
「読みたい?」
にやりと楽しげな表情がそこに浮かぶ。
子供相手になんて大人げない。
「それ…っ、ください…っ!」
半ば呆れながらも懸命に手を伸ばす。
「一緒に市を回ってくれたら渡してやるよ」
ー冗談じゃない。
明日も仕事をこなしていかないと、生活できない。
無駄なお金を使って遊んでいる余裕などどこにもないのだ。
「こっちにも予定があるんです!!遊んでいるヒマなんてないんです!!」
顔を見て抗議したとたん、かぶっていたフードがずれ、青銀髪のさらりとした長い髪がそこからこぼれ落ちた。
「あ…っ」
「…え?」
フードが取れた瞬間、青年の目は驚いたように見開かれたが、あわててフードをかぶりなおし、顔を隠すように両手でそれをがっちり抑えこんだティアにはそれは見えていなかった。