薬品と恋心
「よし!!」
何かを決意したような声が聞こえてティアはチラリとフードの影から相手をうかがった。
「やっぱり今から市を見て回ろう!」
言うが早いか、手を捕まれ引っ張られる。
「えっ、ちょっと!人の話きいてましたかっ!?」
「聞いてる聞いてる!」
(絶対聞いてない!!)
青年は持っていた文献を棚に戻すと、ティアを店の外へ連れ出し、ずんずん歩いていく。
抵抗してもガッチリと捕まれた手は離れず、本屋がどんどん遠ざかっていく。
「…文献っ!!」
「大丈夫、大丈夫。あんなのすぐには売れないから」
「…でもっ」
「いーからオレにつきあってよ。絶対悪いようにはしないからさ」
楽しそうな笑顔を向けられ、ティアはひとつため息をつくとあきらめたようにその後についていった。