薬品と恋心
「背は小さくて、いつも着ているドレスはフリルがたくさんついていて動きづらそう。髪は黒髪だ」
それだけ聞くと、小さな子供みたいだ。
(いや、子供だからこそ私にお土産探しをたのんだのかな)
でも、先ほどジーニアスは女性と言っていた。小さな子供ではないはずだ。
「歳はおいくつなのですか?」
聞くと、ジーニアスは思案しつつ、眉をよせた。
「歳…か。正確には教えてくれなけど、20代だ。ま、ティアが欲しいと思うものを教えてくれればいいから」
若くみられたいんだろうな…という小さなつぶやきがジーニアスの口からこぼれ落ちた。
「そうですか」
ジーニアスのつぶやきは聞かなかったことにして平然と答えたものの、ティアは内心焦っていた。
20代貴族の女性。
良いものをよく知っているに違いない。
珍しい物が集まっているとはいえ、こんな庶民の市に彼女を満足させるものなんてあるのだろうか。
(安易に引き受けてしまったのは失敗だったかな)
でも引き受けた以上はやらなければいけない。
とても簡単に終わりそうにないが、やるしかない。
(よし、やるぞ!!)
ティアは通りに立ち並ぶ出店をながめ、気合いを入れた。