薬品と恋心
なんでもいいということだったので、とりあえず店を見て回ることにした。
服屋に食器、布、食べ物屋まで。
しかし、なかなか思うものに巡り会えなかった。
日が傾きはじめたころ、ティアはあるアクセサリーの店で足を止めた。
小さな髪飾りやピアスが台にきれいに並べられている。
ティアは髪飾りをひとつ手に取ってそれをながめた。
バラの花をかたどった花びらは、まるでステンドグラスのように光を通してきらめいた。
かなり凝った細工の異国のものだ。
値段を見ると、なかなかいいお値段だ。
手が届かないわけではないが、欲しくてもティアには買えない。
お金は無駄遣いできないし、別に必要があるものではない。
それになにより、ティアがここにいるのはジーニアスの護衛する女性のお土産を選ぶため。
ティアはやるべきことを思い出すように一度目をつぶったあと、手にしている髪飾りを再びながめる。