薬品と恋心
ティアはしばらく迷うように瞳を動かしたが、その口から言葉は出なかった。
「答えたくない…か。じゃあ、ひとつだけ聞かせてくれ」
「…なんでしょう?」
「君はいったい何で生計をたてているんだ?」
「…親もとにいるとは考えないのですか?」
ティアが聞くと、「それはないな」ときっぱりとした言葉が返ってくる。
「あの文献、いくらすると思ってるんだ?子供の小遣いで買えるような値段じゃない。それが買えるようなお金を小遣いとして与えるような親なら、そんな格好はさせないだろう?」
ーそんな格好。
ティアは自分の服を見下ろした。
薄汚れたポンチョ。ジーニアスに見えてはいないが、その下はシャツにベスト、半ズボンとまるで男の子のような服装だ。
確かに文献を買うお金を与える親がいるなら、こんなみすぼらしい格好はしていないだろう。