薬品と恋心

ティアが帰った後の書庫でジーニアスは考え事をしていた。



『依頼を聞く仕事をしている』



確かにティアはそう言っていた。


普通、採取人は自分で依頼を見に行くものだ。


そのほうが選べるし、店の方としても付き合っていくうちに力量がわかり、その人に合った依頼を渡すようになるからだ。


それなのに、ティアのような子供に依頼を見に行かせるとは。



(まるで自分を隠すような依頼の受け方だな)



ー自分を隠す?



ジーニアスはハッとした。


各地を旅する幻の採取人がこの町に来ているという噂を思い出したのだ。


その姿は男とも、女とも呼ばれるが、誰ひとりとしてその姿を見た者はいないということを。



ーまさか。



ティアを通して依頼を受けているのはその採取人なのではないだろうか。


どの程度の依頼ならこなせるのかきっとティアはわかっていて、依頼を引き受け、それを伝えているに違いない。


かなり親しくなければそんなことはわからないはずだ。


なんとも言えない感情がわき起こり、ジーニアスはこぶしを机に叩きつけた。


ダンッと言う音が部屋に響き、机の上に置かれていた物がカタカタと小さく揺れた。


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