薬品と恋心
ティアが出ていってからしばらくして、薄汚い格好をした男が入って来た。
髭はモジャモジャと生えている上、大きめのチューリップハットをかぶっているので表情が読めない。
「い、いらっしゃい」
本当ならすぐにでも出ていってもらいたいが、客である手前、追い出すわけにもいかない。
「何をご入り用で?」
ー早く用件を聞いて帰ってもらおう。
店主はひくつきながらも笑顔を顔に貼り付けた。
男はそんな様子を気にも止めず、カウンターまで歩いて来るとドンッと腕をカウンターにおき、下からジロリと店主を見た。
「この店で一番高い依頼はどれだ」
「悪いね。いましがた売れてしまったよ」
「なに!?誰にだ」
「それは言えないね。他にあるのはこんなとこだ」
店主は残っていた依頼書を広げてみせた。
「チッ、こんなんじゃ話にならん」
男は吐き捨てるように言うと、ズカズカと店を出た。
「最近、高報酬の依頼をとっていく輩がいるな…誰も口を割らないところをみると…幻の採取人か」
プランツの木の看板を横目で見上げながら、忌々しく男はつぶやいた。