躊躇いのキス
1章 出戻りました。
 
「ごめん。侑那……。

 俺、好きなやつできた……」



宮入 侑那(ミヤイリ ユキナ)。22歳。
年が明け、真冬で寒いひと肌恋しいこの季節。


交際して5年。
同棲して3年という彼氏に振られた。



「侑那のところもそろそろだね」


なんて、先週オメデタ結婚をした友人にも言われたばかりだった。


高卒でジュエリーショップ店員として働き始め
キラキラしたものを扱う手前、女子力だって磨き上げているつもりだった。

髪の先から指先まで
丁寧に仕上げられた容姿。


特別すごい美人というわけではないけど
そういった身なりへの気遣いから、とくに自分に自信がないわけでもなかった。


だけど突然言われた言葉。




あたしはどうやら

男に振られたらしい。

 
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