躊躇いのキス
 
「侑那」
「な、何?」


「お前、男にフラれたんだって?」

「……」


「だせーっ」

「なっ!!」



ようやくハッキリとした口調になったと思ったら
まさかの第一声がその言葉。


しかも大笑いしながら、ださいって……!



「な、何よ!!
 雅兄に言われたくないっ!!」

「あいにく、俺が女にフラれるとか無縁なんで」

「……」


それを言われたら、何も言い返せなかった。


数年ぶりにちゃんと見た雅兄は、あたしの記憶の中の雅兄よりもずっとカッコよくなっていた。


髪の毛はダークブラウンに染められていて
肩幅もがっちりとしている。
きっと立ち上がったら、背も高いんだろうな……。


可愛らしい顔立ちだったのに、いつの間にか男らしい顔立ちになっているけど
どことなく甘いフェイスを残していて、妙に色っぽかった。
 
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