躊躇いのキス
 
「ぷぷっ……すげぇ顔……」
「ななっ……」


目の前で吹き出し、笑いだす雅兄。

途端に顔が真っ赤になった。


「俺を虜にさせたいんなら、これくらいお前も俺をドキドキさせるんだな」

「……」


スッと離れた雅兄は
カチャリと助手席のシートベルトを外してしまう。


「いってらっしゃい。

 彼女」


手をひらひらとさせて、余裕な笑みの雅兄。


悔しくて……
恥ずかしくて……



「……っ…行ってきます!!」



怒りながら一言言い放つと
雅兄の車を降りた。
 
< 106 / 203 >

この作品をシェア

pagetop