躊躇いのキス

《……はい?》
「あ、っと……宮入です」
《あらあら。ちょっと待って》


仕事が休みの今日。
あたしは夕方になると、隣の家のチャイムを鳴らした。

相手があたしだと分かると、すぐにインターフォンは切れ、代わりに玄関が開く。
いつものほんわかとした笑みを向ける丸山さんが顔を出した。


「雅人さんなら、まだ帰ってないけど……急用かしら?」
「あ、いえ……。
 ちょっと遊びに来ただけで……」
「あら、そう?じゃあ、上がって待っててくださいな」
「……はい」


雅兄が、まだ帰ってないのは分かっていた。

時間は夕方の5時。
何もなければ、今から学校を出るはずだろう。

あたしは丸山さんに促され、雅兄の部屋に上がって待っていることにした。



「ゆっくりしていってください」

「ありがとうございます」


テーブルに紅茶を置かれ、雅兄の部屋に一人取り残された。


いつもは雅兄が勝手に人の部屋に上がっているけど
今日はいつもとは逆で……。


だけど思えば、小さい頃はこうやって、雅兄の部屋にもいっぱい来てたな……。
 
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