躊躇いのキス
 
「もー!
 そんな人をバカにするんだったら、出て行ってよ!
 ここ、あたしの部屋なんだけど!!」


「無理。
 俺の部屋でもあるし」


「はあ?」


「だっただろ?
 昔お前が言ったんじゃん」


「え?」



(まさにぃはいつでも、ゆきなのおへやに入ってきていいんだよ。
 ゆきなのおへやは、まさにぃのおへやでもあるんだから)


「ってな」

「い、いつの話!?
 そんなの無効に決まってんじゃん!!」

「知るか」



何を言い出すかと思えば、そんな小学生の時に言ったような言葉。


なんとなく覚えてはいるけど
そんなのは20歳を超えたあたしたちにとっては、完全に無効な話であって……。




「だーめ。

 俺には侑那を一人にさせない義務があるの」




なんて台詞を言われて、
つい追い返そうとした腕が止まってしまった。
 
< 11 / 203 >

この作品をシェア

pagetop