躊躇いのキス
 
「お前、何してんの?」
「え、あ、いや……」


雅兄は、勝手に人の部屋に入ってベッドに寝転がっていたあたしを、いぶかしげな目で見ている。


確かにあたしがしていることは、怪しいことかもしれないけど……



「ま、雅兄のマネだよ!!」



人のこと、全然言えないはずだ。


雅兄は「ふーん?」とあまり納得いっていないような顔でうなずくと、着ていたスーツの上着を脱ぎ捨てて、ベッドへと近づいてきた。


「な、何……?」
「てっきり、誘ってんのかと思った」


ニヤリと笑って、ベッドに座り込んでいるあたしのすぐ脇に手をかけた。

その顔は、小悪魔な笑みそのもので……

でも……



「……そう、だよ……」



あたしも負けじと、挑発的な瞳を雅兄に返した。



「雅兄を誘うために、今日は待ってたの」

 
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