躊躇いのキス
9章 デート
「へー。なんか大変そうだね……」
「うん、でもまあ……楽しいよ」
今日は仕事帰りに、智世と待ち合わせて一緒に飲みに来ていた。
智世には、雄介と別れたことや、雅兄が好きなことなどを話していたので、その後の状況をすべて話したけど
やっぱり返ってきた反応は、憐みの目で……。
「仮の恋人かぁ……。
それって、普通の恋人とどう違うの?」
「わかんない。
けど……明らかに、好きの気持ちはあたしのほうが大きいって分かる。
いっつも雅兄は、人のことを妹扱いするし」
「それじゃない?」
「え?」
話を聞きながら、智世がある突っ込みを入れてきた。
何のことなのか分からず、首をかしげて見返すと、
「その、雅兄って呼び方変えてみなよ。
そこから妹っぽさが出てるし」
「えっ……」
思いがけない提案に、思わず声を上げた。
「ま、雅人……さん?」
「っぽくなーい!
幼馴染なんだから、もうこの際、呼び捨てでいいじゃん」
「ま、まま……雅人……」
自分で言ってて、顔がいっきに赤くなったのが分かった。
雅兄を呼び捨てにするとか、恥ずかしすぎる……!