躊躇いのキス
 




「映画?」
「……そう。
 智世がチケットくれて……
 よかったら行かない?」


次の日の朝、
恒例となった途中駅まで送ってくれる車の中で、昨日の話をもちかけた。


まずは、カップルシートということを伏せて誘ってみよう。


「べつにいいけど」
「え!?いいの!?」
「は?映画くらい、べつにいいよ」


構えていたわりには、あっさりとOKをしてくれたのでなんだか気が抜けた。


「いつ?」
「うーん……。
 今度の金曜日とかは?
 その日、あたし早番だから、5時には上がれるし」
「了解。
 どこの映画館だっけ?
 その最寄駅で待ち合わせるか」
「……うん!!」


問題なく承諾してくれた雅兄に、嬉しくなって満面の笑みで返事をした。


「おおげさ」


雅兄はそんなあたしをちらっと見た後、
笑いながら突っ込みを入れていた。


だけどやっぱり、嬉しいものは嬉しいんだもん。
 
 
< 125 / 203 >

この作品をシェア

pagetop