躊躇いのキス
「映画?」
「……そう。
智世がチケットくれて……
よかったら行かない?」
次の日の朝、
恒例となった途中駅まで送ってくれる車の中で、昨日の話をもちかけた。
まずは、カップルシートということを伏せて誘ってみよう。
「べつにいいけど」
「え!?いいの!?」
「は?映画くらい、べつにいいよ」
構えていたわりには、あっさりとOKをしてくれたのでなんだか気が抜けた。
「いつ?」
「うーん……。
今度の金曜日とかは?
その日、あたし早番だから、5時には上がれるし」
「了解。
どこの映画館だっけ?
その最寄駅で待ち合わせるか」
「……うん!!」
問題なく承諾してくれた雅兄に、嬉しくなって満面の笑みで返事をした。
「おおげさ」
雅兄はそんなあたしをちらっと見た後、
笑いながら突っ込みを入れていた。
だけどやっぱり、嬉しいものは嬉しいんだもん。